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受精してからでは遅すぎる? ~エピジェネティクスと変化し続ける遺伝子~

こんにちは! 町田明生晴です。

前回のブログで、「生まれてからでは遅すぎる」という寄稿のお話をしました。

当時ソニーの名誉会長だった井深大さんが、約40年前の名著『胎児はみている』の裏表紙に書かれたものです。

今日は、この寄稿をまずは全文ご紹介したいと思います。


『胎児はみている』トマス・バーニー博士著


生まれてからでは遅すぎる” 

本書は今まで全く存在がはっきりしていなかった世界を、私たちの前に展開してくれた。
私が昨年、一番多く辞書を引いて読んだのが、この原書である。
胎児の神秘が感激と驚きの連続で説から、私の「0歳からの教育」を「0歳前から」に修正しなければならなくなってしまった。
胎内学習の可能性は“0歳からの学習”につながり、子どもを“よい性格” “良い頭脳の人間”に結び付いていることを示唆していると思う。文字通り、日本の小児科医の第一人者である小林登先生が、心を込めて翻訳しておられるのを見ても、本書がありきたりのものでないことがわかるだろう。

ソニー名誉会長/㈶幼児開発協会理事著 井深大 
※小林登先生は、当時、東大小児科学教授で、国際小児科学会会長。
※日本語版初版 1982年8月25日発行


時の日本を代表する凄いメンバーにより、日本語訳出版プロジェクトが進んだことが想像できますよね。

当時24万部も日本で売れたことも凄いことですよね。

それから約40年経ちました。

もし井深大先生が生きておられて、トマス・バーニー博士の現在の書籍に寄稿されるなら、

“受精してからでは遅すぎる”

と、今度はさらに訂正されたかもしれません。

なぜ、私がそう思ったかというお話を今日は書いていきたいと思います。

 

父親のストレスが3世代後の子孫まで影響する?

トマス・バーニー博士の最近のインタビューで聞いたお話です。(※2020年11月)

エピジェネティクスという分野の最新の研究によれば、受精する前の父親のストレスが、世代を超えて胎児の心身の発育に影響するという結果がでているというお話でした。

最近まで、精子は卵子にDNAのみを受け渡すと考えられていたのですが、マウスを使った新しい研究では、次世代に影響を与えるマイクロRNAにも精子が影響することが示されています。

つまり、妊娠前に父親の心と体の状況が悪ければ、その情報は精子に影響を与え、マイクロRNAを通して、胎児の遺伝子に受け継がれて影響を与えるというのです。

そして実験では、ストレスにさらされた父親の子孫たちの少なくとも3世代にわたって、不安症や社交性の欠如が見られたそうです。

さらに、人に対する別の研究では、ストレスを抱えた男性の精子のマイクロRNAが減少するという結果が出ており、虐待経験がある男性の精子のマイクロRNAが、普通の男性と比較して300倍の減少をしていたというデータもあるそうです。

もちろん心のストレスだけではありません。

物理的なこと、例えば、喫煙や肥満、その他の環境要因も精子に影響を与え、同様に世代を超えて情報が受け継がれます。

こうした最新の研究では、胎児の心身の健康状態が、受精前からの親のライフスタイルと関わっていることが示唆されます。

 

受精してからでは遅すぎる?

エピジェネティクスでわかることは、人の成長は、生まれつきの遺伝的な特徴だけでは、決まっていないということです。

遺伝子の周りにはエピゲノムがあり、エピゲノムは環境から与えられる刺激、例えば食べ物、関わる人、教育、環境などにより遺伝子を常に変化させているからです。

トマス・バーニー博士によれば、過去には「統合失調症の7割が遺伝」、「XY病の3割が遺伝」という人が多くいたそうです。

しかし実際そうした論説に科学的に根拠は全くなく、統合失調症の遺伝子もXY病の遺伝子も存在しないということでした。

健康、病気、障害などは、エピジェネティクスでいえば、確定したものでなく、外部の環境の刺激による遺伝子のスイッチのオンオフによるからです。

人生は、オギャーと生まれた誕生日に突然はじまるのではありません。

命は受精前、胎内、誕生後まで繋がっている連続体です。

そして、心と体の間に分離もありません。心に起きたストレスは体に影響し、体に起きたストレスは心に影響します。

なので遺伝子は、例えば喫煙やアルコールなどの物質的な環境の影響だけでなく、親の感情、思考の影響も受けます。

受精前から受胎、そして出産後まで、親の関り方が、子どもの心身の健康や、性格形成などに大きな影響をあたえます。

もしこうした考えを、これから親になる人たちが知ったら、どうするでしょうか?

人の考え方はもちろん様々です。

しかし、妊娠前からなんらかの準備するという選択も増えるかもしれません。

そして私は、こうした選択肢が増えることは良いことではないかと思います。

なぜなら、バーニー博士の研究によれば、受精からの胎内にいる期間が、子どもたちの心身の病気や障害を予防し、良い性格、良い頭脳を育てるとても大切な時期だといことが明白だからです。

 

もちろん過度な心配は無用?

ただ「妊娠前からそんなに気にしなければいならないの!」と、逆に大変さやストレスを感じる方もいるかもしれません。

なので誤解がないようにお伝えしますと、日常的なストレスや、たまにネガティブに考えてしまったりすることまでも気にする必要はないと思われます。

なぜなら、40年前の博士の著書『胎児はみている』で、博士は次のように書いています。


たまに消極的な考え方をしたり、ストレスに見舞われたからといって、胎内での母子の“きずな”に取り返しのつかない悪影響が及ぼされることはない。
繰り返すが、胎児はひじょうに柔軟性に富んでいるので、少々のことにはへこたれないのだ。
もっとも、母親との愛情を断ち切られたり、生理的・心理的欲求がいつも無視されたりすれば、胎児にも危険が及ぶ。
しかし胎児の欲求といっても、そんなに理不尽なものではない。愛情と心遣いがあれば十分なのだ。
それさえあれば、他の一切のものも自然についてくるのである。
※『胎児はみている』第三章最終頁より


と、いうことです。

トマス・バーニー博士の研究は膨大で奥が深いため、たくさんのことが詳細に、しかも科学的に書かれています。

なので全部理解しようとすると、私たちはきっと一杯いっぱいになるかもしれません。

しかしながら博士の情報が、子供たちの未来を革命的に変える力があることも事実。

なので、私たちは科学の難しい話をすべて理解するというよりも、博士が導いてくれた結論を、実際の子育てや教育に応用できれば良いのだと思います。

そして、そのためにやることは、きっと多くはありません。

私が感じたことは、シンプルで、

まずは、受胎の前3カ月ぐらいから胎児の人生がはじまっていることを理解し、そこから胎児を一人の人として、尊重して向き合える態度を持つことだと思います。

博士がおっしゃったとおり、あとは「愛情と心遣いがあれば十分であり、それさえあれば、他の一切のものも自然についてくる」のだと思います。

あとは日本の胎内記憶教育研究の第一人者、池川明博士が教えてくださるように、感性をつかって胎児に聴くこと、対話することで、多くの問題が解決することも報告されています。

妊娠前から、両親がこうしたことを理解して取り組むだけでも、大きく育児は変わるのではないかと思います。

それからトマス・バーニー博士の論文で、博士が出生前・周産期に、親がとった方が良い3つの具体的な提案をされていたので、それをシェアしたいと思います。


1.抗酸化物質を取ること ~ ブロッコリーやカリフラワーなどのアブラナ科の野菜をたくさん食べるとよいでしょう。それらは腫瘍と戦う遺伝子を強化し、癌などを発症するリスクを下げる可能性があります。

2.定期的に運動すること ~ 運動によって、幹細胞が脂肪細胞に変わるのを防ぐことができます。

3.遺伝情報をつたえるエピゲノムの健康を保つこと ~ そのためにストレス、不安、うつなどを放置しないで、順次対応していくことが大事です。

※出生前・周産期心理学協会 トマス・バーニー博士論文より引用


そして遅すぎることはないというのも真実?

最期にもう一つ、私がトマス・バーニー博士にした質問のお話もシェアしておきますね。

ちなみに私の親世代は、胎児や新生児に意識があるとは思っていませんでした。

なので振り返ってみれば、私自身にも幼少期のトラウマのようなものがたくさん見つかります。

そこで博士に、「それは取り返しがつくのか、どうか?」を聞いてみたのです。

私「博士、受精前からの胎児との関りが、とても大切だということはわかりました。しかしながら知らなかったために胎内、あるいは新生児の時期にうまく親が関われなかった場合、それは取り返しがつかないのでしょうか? それとも、なんとかなるのでしょうか?」

博士「ありがたいことに… エピジェネティクスいう概念では、遺伝子は一生涯、常にダイナミックに変化し続けるものですよね。ですから一度入った良くないスイッチをオフにして、良いスイッチをオンにするようなことが常に起きているということです。なので遅すぎるということはありません。」

とのこと。希望が持てるコメントを頂きました。

大人になれば変化に多少の時間はかかるかもしれませんが、良い想い、良い祈りが、良い遺伝子をオンにすることは間違いないようです。

 

命は受精前から始まっている

トマス・バーニー博士の研究が拡がったら良いなと私は思います。

人が何を選択するかは自由ですが、少なくとも選択肢のひとつとして、これから親となる人たちに知っていただけたらと思いました。

実際、トマス・バーニー博士の研究と同じような真実を、現場の保育から見つけて40年実践されてきた土橋優子先生のスコーレ保育では、良い意味で子どもたちの自立が早く、生き生きとしていて、身体能力が高く、対人関係や問題解決能力に優れています。

新しい育児、教育の選択肢がますます増えたら良いなと思っています。

引き続き、次回はエピジェネティクスについて、書いてみようと思います。

いつも、お読みいただきありがとうございます。

感謝

町田明生晴



 

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